茉里香はしばらく固まったあと、
「……えっ!? やだ!」
と声をあげた。
「温泉に入ったとき、冷たい部分があった! あ、あれが氷だったってこと?」
『おお、裏付けの証言が出てきたな。仮定はどうやら正しかったようだ』
茉里香はうえ〜、と両手をこすり合わせた。
『しかし、女風呂だったか』
「なに? 封太さんのえっち!」
『いや、そうではなく』
封太は真顔になった。
「氷を捨てた人間は、つまり女だ。きみたちが違うとなれば──」
そのとき、客室の扉が軽くノックされた。
「お食事をお持ちしました」
入ってきたのは、宿の女将。──雪村園枝だった。
「みなさん、こちらにお揃いでしたの……」
園枝の目は伏せられたまま。
茉里香の心臓が、早鐘のように鳴り出す。
どこまで聞かれた?
喉がひりついた。
でもこちらには刑事のるいがいる。相手は女性ひとり。
滅多なことは起きない。……はずだ。
園枝は悲しげに目を伏せたまま、言った。
「申し訳ありません。……私がやりました」