それからは、息をつく暇もなかった。
園枝が警察に連絡を入れたが、大吹雪の影響で雪崩が起き、宿へと続く一本道は完全に塞がれたという。
宿泊客は全員がラウンジに集められた。
と言っても、茉里香と暦、久我慧、月館るい、御影燈一郎の五人だけ。
そこへ雪村園枝と料理人の花巻(はなまき)翔悟が加わり、七人であれこれと話し合った。
「モリストッパーZくんを殺した犯人が、この宿の中にいる、もしくはいたってことだよね?」
慧が軽い調子でそう言った。
「まあでも……、この天候じゃ犯人も外には出られないだろうね」
「できすぎたくらいのクローズド・サークルだな」
燈一郎がため息をついた。
「そして誰もいなくなった、とならなければいいが」
「食料のほうは、当分のあいだは心配はありません」
宿の料理人、翔悟が言った。
「通常のメニューでも三日分はお出しできますし、それ以外でも一週間はもちます」
「そういえば、お夕飯もまだだったものねえ〜」
暦がのんびりと言った。
茉里香といえば、とにかく自分たちの客室にもどりたかった。
警察が来て、身の上を調べられたら非常にまずい。
先日、父親から入っていたメッセージは、「犯行現場の監視カメラのデータを改竄しろ」というものだった。
……運悪く、そのデータはまだ自分のノートパソコンに残っている。
なんとしてでも、あれを早く消さないといけない。
(……モリストッパーZ! 殺されるときくらい、人に迷惑をかけるのはやめなさいよ……ッ!)
茉里香は心のなかでモリストッパーZに悪態をつく。
もちろん、一番悪いのは殺人犯なんだけれど。
茉里香は脳をフル回転させて、もっともらしいことを、もっともらしい顔で言った。
「……慧さんが言ったように、いまは犯人も逃げられませんよね? 玄関を封鎖して、私たちも自室以外原則出入り禁止。そうすれば、仮に私たちのだれかが犯人だったとしても、警察が来るまで証拠を消したりはできないんじゃないかな」
そう、茉里香には引っかかっていることがあった。
あの湯上がり処に、凶器らしきものはなかった。
ということは、犯人はそれを持ち去った。
持ち去ったのは、それが見つかれば犯人がわかってしまうから。
「……そうね。停電になったりしても困るわ。各自、対策をとっておきましょう」
るいの言葉に、その場の全員がうなずいた。