こたえ -- 06


フィリーネの葬儀がすべて終わると、郵便屋はアルノとロミィのことをルイスに預けた。
そして、郵便屋、ベルナデット、フミ、そして神さまは、そろって森にやってきていた。

『……こんなときだから言うけれどさ』

神さまが、ぼそりと言った。
木漏れ日はやさしく、神さまの上に降り注いでいる。

『こんな世界なんて、俺にとっては悪夢だと、ずっと思っていた。
俺は願いを叶えることでしか人とは関われないってのに、関わった人間はみんな不幸になるんだからさ』

そして神さまは、のことを見た。

『でも、キミたちは違った。
悪夢だったはずなのに、ずっと楽しそうだった。……だから帰ってほしくなかったんだ』

それを聞いて、ベルナデットが笑った。

「そんなことだろうと思ったよ。
私も記憶がもどって後悔はないが、期待していたようなものではなかったからな。
……きっと長いあいだ、私は記憶を失うことで守られていたんだろう」
「神さま。……あなたにずっと、言いたいことがあったんです」

郵便屋が口を開いた。

「僕も、後悔はしていません。でも、ずっとあなたには、申し訳なかったと思っていました」

そして神さまの両肩に手を置くと、神さまの目線に合わせてほほ笑んだ。

「これからは、あなたの永遠に、ぼくたちも付き合います」
『……は?』

神さまが、ぽかんとして郵便屋を見た。
郵便屋とベルナデットは、顔を見合わせて笑った。

「僕とベルナデット、それにフミもいます。もうあなたをひとりにはさせません」
『んなっ、……』
「……よかったね、神さま」

動揺している神さまの姿を見て、が笑った。
そして、も笑って、言った。

「もう大丈夫だね。……わたしたちが、元の世界に帰っても」

ざああ、と森の中に風が吹き抜けた。
足元の落ち葉が、かさかさと音を立てながら転がっていく。

『……やっぱり、それを願うか』
「うん。どんなにこの世界が居心地がよくても、ぼくたちがいるべき場所は、ここではないから」
「……

フミがふたりに近づいて、言った。

「あなたたちのおかげで、多くのことを学ぶことができました。元の世界に帰っても、どうぞお元気で」

ベルナデットは苦笑する。

「短いあいだだったな。それなのに、おまえたちとはもうずいぶんと、長くいっしょにいたような気がする」
「そうですね。と出会ってから、ぼくたちの日常は、すっかり変わりました」

郵便屋はそう言うと、鞄からなにかを取り出した。

「……。これはアルノから預かってきたものですが、フィリーネさんの遺品だそうです。
自分が持っているより、あなたが持っているほうがいいから、と」

そう言って、ちいさな麻袋を手渡した。

「そして、。これは手紙です。元の世界に帰ったときに、読んでください」
「え……」

が受け取ったのは、1通の真新しい封筒だった。

「……これ、だれからですか?」
「さあ、だれからでしょう」

郵便屋が笑った。

「元の世界に帰っても、僕たちはいつだってあなたたちのことを想っています」
「……わかりました」

そしては、みんなの顔を見渡した。

「……みんなのことは忘れない。いままでほんとうにありがとう。
アルノたちにも、そう伝えてください。……それと、神さま」

は神さまにほほ笑みかけた。

「この世界にぼくたちが来たことが、ぼくたちにとっての『悪夢』だって言ってたけれど」
「わたしたちにとってはやっぱり、ぜんぜん『悪夢』じゃなかったよ」

も同じように、笑って言った。

「……それじゃあ、神さまの面目めんぼくが丸つぶれだよ」

神さまも苦笑した。
そして双方、さよならは言わなかった。