こたえ(e)


「……ロミィっ!」

が同時に駆け出した。

ロミィは、ゆっくりと路地に崩れ落ちた。
そしてロミィが倒れた石畳の上には、じわじわと血だまりが広がっていった。

「ロミィ、そんな、どうして……!?」

アルノがロミィの上半身を抱き起こした。
ロミィの服の左胸の部分には、ぬるりとした血がついている。

ロミィはふるえる手をアルノの頬に伸ばした。
そして、わずかに口を動かした。

「……う」
「な、なんだ? なんて言った?」

ロミィはほほえむと、言った。

「……りがと……、……アルノ」

そして、ロミィがかすれる声でつぶやいた。

「これ……で……、パパとママのところに……いける」

そしてロミィのからだから、ふっとちからが抜けた。
その光景にはぼうぜんとしていたが、すぐに神さまをふり返った。

「神さま! ぼくたちの願いを聞いてください!」
「ロミィを助けて……!」

神さまはしばらくロミィのことを見つめていたが、それからふい、と顔をそらした。

「願う必要なんか、ないよ」
「ど、どうしてそんなこと……!」
「……生きている」

ロミィのケガの様子を確認していたルイスが、ぼそりと言った。

「どこも、ケガをしていない。眠っているだけだ」
「ええ!?」

がロミィを見た。
ロミィは、すやすやと寝息を立てている。

「……そんな、どうして」

サユは、自分が手にしていたクナイを見た。
そこにはたしかに、血がついている。

「……ふしぎなことだって、たまには起こるだろ」

神さまはいじけたように言って、空を見上げた。

「だってここは、神さまの……、『ライナス』の街なんだからさ」

神さまが見上げた空は、朝のくもり空がまるでうそのような、吸いこまれそうなほど青い、よく晴れた空だった。