あめふり(c)


とフミがルイスの家に着くと、フィリーネの遺体はすでに聖堂の敷地内にある遺体安置室に運ばれた、と教えられた。 あしたの葬儀まで、彼女の遺体はそこに置かれるらしい。

そしてフィリーネの代わりに、ルイスの家には新しい患者が増えていた。

「こんな雨のなかで倒れていたんだよ」

そう言ったのはアルノだった。
ベッドに寝かされていたその患者の顔を見て、がおどろいた。

「……サユじゃないか! もしかして、あのまま野宿したのか!?」
「なんだ、知り合いかよ?」

サユは、荒い息づかいで呼吸をしながらも、目を閉じたままだ。

「彼女、だいじょうぶなのか?」
「ただの風邪だ」

うしろから声をかけてきたのは、ルイスだった。
ルイスはサユのひたいの汗を布でぬぐうと、ため息をついた。

「こんな無謀な旅人は、はじめてだ」
「……サユは、ようやく父親の手がかりを見つけたんだ。きもちがあせってしまったんだろう」
「父親の手がかり?」

アルノがたずねて、がうなずいた。

「旅に出た父親から最後に届いた手紙が、この街から送られたものだったらしい。手紙には森の神さまのことが書かれていたって……」
「……数年前、この街に極東の国からやって来た旅人がいたな。彼女とは衣装が似ていたから、もしかすると……」
「そ、その人、いまどこにいるんですか!?」

の問いに、ルイスは首をふった。

「重い病の娘を救うために、森の神さまの言い伝えを頼りにやってきたと言っていたが、 その旅人も結局、病に倒れて息を引き取った。この街に来て、一ヶ月も経っていなかっただろう」
「そんな……」

アルノはじっと、サユの顔を見た。
それから、ぼそりとつぶやいた。

「……この子も、家族を失ってしまったのか」