明くる日。
夜から降り出した雨は、まだ止むことがなさそうだった。
はベルナデットの様子が気になって、はやめに食卓をのぞいてみたが、
そこにベルナデットのすがたは見当たらなかった。
「おや、。おはようございます」
「郵便屋さん、おはよう……、あの、ベルナデットさんは?」
「朝はやく、出かけていきましたよ。今日はこの家にもどらないとか」
「あ……なにか、変わったようすはありませんでしたか?」
「? いえ、特には……」
は、だんだんと不安を感じてきた。
……もどった記憶が、もしもベルナデットをさらに苦しめることになっていたら、どうしよう。
「お兄ちゃん、わたし、ちょっとベルナデットさんを探してくる」
「あれ、家のなかにいなかった?」
「うん、出かけたみたいで……」
とは、同じ部屋を借りている。
きのうからはさらに、そこにフミも加わって、すこしにぎやかな部屋になっていた。
「私もいっしょに探します」
フミが言って、が苦笑して首をふった。
「……ううん、フミはお兄ちゃんといっしょにいて。ベルナデットさんと、ふたりで話したいこともあるから」
そう言うと、はぎこちなく部屋を出て行った。
ふしぎそうにのすがたを見送ったフミに、が声をかけた。
「……きのう、この家に住んでいるアルノっていう男の子のおばあさん、フィリーネさんが亡くなったんだ。
アルノのことも気がかりだし、ぼくはこのあとフィリーネさんのところに行くけれど、フミはどうする?」
「私も行きます。別れはかなしいことですが、きちんとしなければいけません」
フミの言葉に、はふと、考えた。
(そういえば、この『フミ』を創った人が、宇宙のどこかにいるってことだよな)
フミもその人と別れて、ここへとやって来た。
……別れのとき、ロボットのフミも、そのことが『かなしい』と感じたのだろうか。