郵便屋の家に帰ってきたあと、事情を聞いたベルナデットがまず、
「……この、大ばかものが!」
と大声でどなった。
ロミィはすでに部屋で休んでいる。
アルノは、今晩はルイスの家に泊まるということで、この家にはいなかった。
「あの話を聞いたうえで、のこのこと森の神さまに会いに行くやつがあるか! しかも実際に会ってきて、約束を交わしただと!?」
「で、でも、ベルナデット。ぼくたちが悪夢を思い出しさえすれば、郵便屋さんとベルナデットを、もとにもどしてくれるって……」
「その代わりに、ふたりが犠牲になったらどうする!?」
ベルナデットが声をふるわせたかと思うと、ぼたぼたと大つぶのなみだをこぼした。
「そんなことでもとどおりになったとしても、私はぜんぜん、うれしくない!」
ベルナデットはうしろを向いて、それきりこちらに顔を向けようとはしなかった。
そんなベルナデットのとなりで、郵便屋がしずかに言った。
「……わかりましたか、、。
あなたたちは、あなたたちが思う以上に危険な行いをしたんです。今後は無茶をしないと、約束してください」
「……すみません……」
「それと」
郵便屋はわずかにほほえんで、言った。
「……フィリーネさんの葬儀は、あさってです」
そんな郵便屋にかける言葉を、は見つけられなかった。
そしてベルナデットの記憶があしたもどるということも、
はとうとう、最後まで言い出せなかったのだった。