なぞ -- 01


中央広場のベンチにベルナデットとふたりで座っていたは、郵便屋がふらり、と家から出てくる姿を見かけた。

「あ、郵便屋さん。……どうしたんですか? なんだか、顔色が悪いようだけれど」
「僕は大丈夫です」

郵便屋は両目を片手で覆いながら、にたずねた。

「それより、は……」
「郵便屋さん!」

ちょうどそのとき、が走ってきた。
全力で走ってきたのか、息を切らせて顔も青い。

「郵便屋さん、たいへんなの! フィリーネさんが……!」

郵便屋はそれを聞くと、すべてを察したように静かにうなずいた。

「……アルノとロミィは、いま、教会へ行っています。僕が呼びに……」
「ばかものめ」

ベルナデットが強い口調で郵便屋に言った。

「そんなことは、私がする。郵便屋は早く、フィリーネの元へ行け!」
「……ありがとうございます、ベルナデット」

郵便屋はこんな事態の中でも、ほほ笑んでいた。

「それでは、行きましょうか」



ルイスの家に向かうあいだ、は夢で見たことを郵便屋に話した。

「あれは、ほんとうにあったことなんですか? 郵便屋さんは、いったい……」
「……森の神さまの話を、にはまだしていませんでしたね。
森の神さまは、どんな願いでも叶えます。そしてその代償に、『永遠の悪夢』を与える」

は郵便屋の顔を見た。
郵便屋の表情は、あいかわらずだった。

「……フィリーネは生き返ったあと、僕のことを覚えてはいませんでした。
僕はというと、かなしみや怒りといった感情がわからなくなってしまいました。
この不自然な状態のまま老いることもなく、生き続けること。それが神さまが僕に与えた、『悪夢』なんです」
「そんな……っ!」

は涙ぐんだ。

「好きな人を助けたいって願う気持ちに、どうしてそんな罰を与えるの!?」
「いいえ、。神さまは、僕の願いを叶えてくれました。これは罰ではなく、取り引きの代償です」
「だとしたって、あまりにも残酷だよ……!」

そしてルイスの家の前に着くと、は足を止めた。

「……?」
「わたし、ここで待ってる。……郵便屋さんは、フィリーネさんのところに行ってあげて」

はぐすぐすと鼻をすすりながら、郵便屋に言った。
郵便屋は静かにほほ笑むと、の頭をそっとなでた。

「……ありがとうございます」

郵便屋はそう言って、ルイスの家の中へと入っていった。