そのころ、はひとりで、ふたたびルイスの家へとやってきていた。
「すみません、ルイスさん。フィリーネさんの顔を、どうしても見たくなっちゃって」
「……好きにしろ」
ルイスはそれだけ言うと、のことを家のなかへと入れてくれた。
郵便屋の言ったとおり、根はやさしい人のようだった。
がそっと部屋をのぞきこむと、フィリーネはすやすやとしずかな寝息を立てていた。
きのう、この部屋に来たときにはろうそくの明かりだけだったが、
いまは朝日が部屋のなかへと差しこんでいて、ぽかぽかとあたたかい。
はベッドのとなりのイスに、そっと腰をおろした。
「……フィリーネさん。この街の人たちは、みんなやさしいね」
そう言いながら、はフィリーネのひたいをそっとなでた。
「でも、なんでだろう。ときどき、きゅうっと、胸がしめつけられるの」
郵便屋が笑うたび、こころのはしっこがちくちくする。
そのきもちの正体が、にはわからなかった。