もり -- 04


郵便屋の家は、入り口を入ってすぐ左側にちいさなカウンターがあり、そのそばには来客用の机と椅子が置かれていた。
家に足を踏み入れてみて、なぜアルノが泥棒が入ったと言ったのか、すぐに理由がわかった。

カウンターの内側には書類が散乱し、机の引き出しはどれも開けっぱなしになっていた。
それはあきらかに、だれかが荒らした形跡だった。

アルノは肩をすくめて言った。

「オレとロミィが少し家を離れていたすきに、こんなだぜ?
それからふたりで調べたけど、盗まれたものは見つからなかったんだ」
「そんなことが。……ひとまずふたりとも無事で、よかったです」

郵便屋はそう言ってアルノとロミィの頭をやさしくなでたあと、散乱した書類を拾い始めた。
たちも、あわてて郵便屋を手伝う。

ひととおり片づいたところで、郵便屋が言った。

「……たしかに、なくなったものはなさそうです。盗むものがなくって、諦めたんでしょうか……」
「この辺りでは、泥棒が多いんですか?」

がたずねると、郵便屋は首を振った。

「いいえ。この街は国のいちばん端にある、ちいさな街です。
街を見回るような兵士こそいませんが、それでもおおきな争いの起きたことがない、治安のいいところなんです。
泥棒なんて話もめったに聞かないのですが……」

郵便屋は、集めた書類をとんとんと机の上で整えた。

「また狙われないとも限りません。
周りの家の人たちにも気をつけてもらうよう、声をかけておきます」

そのとき、家の外からやわらかなラッパの音が聞こえてきた。

「あの音は……?」
「郵便ラッパです。となり街からの郵便馬車が到着したようですね」

そして郵便屋は近くにあった箱をよいしょと持ち上げると、扉の外へと出ていった。
が窓から様子をうかがうと、郵便屋が御者ぎょしゃにその箱を渡し、代わりの荷物を受け取っていた。

「見て、おにいちゃん。馬!」

が馬車につながれた馬を見てはしゃぎ、アルノが言った。

「馬なんかではしゃぐなんて、へんなやつだな。……あの馬車は、いろんな街を回るんだ。
ああやって御者からこの街の郵便物を受け取って、それを街の人たちの元へと届けるのが、ここの郵便屋の仕事さ。
この街からの郵便物は、あの馬車がまたどこかの街へと運んでいくってわけ」

ほどなくして郵便屋が家の中にもどってくると、たちに声をかけた。

「僕はこれから、いま受け取った郵便物を街の人たちへ届けていきます。
。もしもまだ疲れていなければ、街を案内しますよ」
「行きます!」

ふたりは元気よく即答した。