取引 -- 07


蒼太は緋色の言葉の意味を考えてから、首をひねった。

「それ、どういう意味? 姫野先輩は、探偵として問題があるってこと?」

蒼太の問いに、緋色は首を横に振った。

「深神先生はぼくが知る人間の中で、いちばん優秀で、有能な探偵だよ。
でも先生は、なによりも自分が信じた答えを優先する人なんだ。だから、その答えのためなら……」

緋色は少しだけ目を伏せた。

「人が何人死んだとしても、きっと立ち止まらない。
だからいま、先生に犯人の居場所を伝えることが、みんなを助けることになるのかは、正直わからない……」
「……でも、緋色。きみはその『深神さん』のことを、信頼しているんだろ?」

緋色がはっと顔を上げると、蒼太はほほ笑んだ。

「話を聞いていればわかるさ。そして、彼は信念を持って生きている人だってこともね」

そう言って、蒼太は図書室の窓の外に目をやった。
だいぶ日が傾いている。西の空が赤く染まっていた。

「……僕は、正しい人の行く道の正しさを、信じるよ。深神さんを信じる緋色のことを、僕は信じる」

緋色はじっと蒼太を見ていたが、それから自分の携帯電話に目を落とした。

「……あおちゃん、背中を押してくれてありがとう。ぼく、深神先生に連絡してみる」
「うん、それがいいと思う」

緋色は深神に電話をかけると、手短てみじかに犯人の居場所を伝えた。
しかし犯人が『姫野ミカミ』の情報を欲しがっているという部分は、伏せたようだった。

電話を終えると、蒼太たちは中等部組の元へともどっていった。

「……亀ヶ淵君、ほんとうにいいの?」

緋色がたずねると、新弥がうなずいた。

「下水流さんのことも心配だし……僕、そろそろ行きます」