取引 -- 03


鷲村たちのいる教室をあとにした新弥は、頭を悩ませていた。

とにかく『姫野ミカミ』の情報を探さなければいけない。
……でも、いったいどうしろというんだろう?

『姫野ミカミ』は、逸話こそ多いものの、学園内にはっきりとした足跡そくせきらしいものはなにもなかった。
彼の所属していたという、ミステリ同好会の部室へ探しに行くことも考えた。
しかし、詩良を犯人に預けたまま、校舎を離れるのは、どう考えても危険すぎる。

そこで、新弥は卒業アルバムの存在を思い出した。

たしか、図書室には歴代の卒業アルバムが保管されていたはずだ。
もしかしたら、写真くらいなら見つかるかもしれない。

それを鷲村の元へ、持っていけば。

そこまで考えて、新弥の足が止まった。

(……持っていけば、下水流さんはほんとうに助かるのか?)

犯人が人質を解放するなんてことは、ありえないと思う。

……それよりも、犯人の居場所がわかったいま、このままここから逃げてしまえば……?

新弥はぶんぶんと首を横に振った。

なにをばかなことを。
そんなことこそ、ありえない。

最善を尽くそう。
僕のいまの役割は『姫野ミカミ』の資料を彼に届けること。

そのあとのことは、それから考えよう。