僕と翠は、紺を小学校に送り届けたあと、古山高等学校に向かった。
「翠ちゃん、おはよー!」
校門近くで、ひとりの女子生徒が翠に体当たりをしながら抱きついてきた。
「オワル、おはよう」
「あれっ、和也もいたんだ、ふーん。……おはよ」
翠に対する態度とは一変して、白々しくそっぽを向きながらそうあいさつを返してきたのは、十了。
伸ばしっぱなしのポニーテールはぼさぼさで、男物のベンチコートを羽織っている。
しかしその格好が様になるくらい、オワルは自由な性格だった。
オワルは翠のことが大好きで、翠のとなりによくいる僕のことをライバル視していた。
僕はオワルの後ろを歩いてきた、マスクをしている男子生徒にも声をかけた。
「ハジメも、おはよう」
ハジメは僕のことをちらりと見ると、無言でうなずいた。
彼の名前は十一。
ただでさえ変わった苗字、変わった名前で目立つのに、ハジメとオワルは双子だ。
しかし、ふたりの雰囲気は真逆だった。
オワルはいつも元気で、クラスの中でも人気者。
ハジメは度を超えた無口で、まるでオワルの影のようだった。
「ねえねえ、ところでふたりとも、もう聞いた? あのうわさ話!」
オワルはいたずらっぽく笑って、僕をうわめづかいで見上げた。
「昨日の日曜日。……音楽室に、出たんだって!」
「出たって、なにが?」
僕の問いかけに、オワルは口元に手を当てて、ささやいた。
「出たと言ったら……もちろん、オバケでしょ!」