影を追って -- 05


そのとき、ガタン、と後ろからなにかの音がした。

「な、なにっ!?」

日高さんが怯えた顔をして、僕にしがみつく。
音がしたのは、どうやら納屋の中からのようだ。

僕は納屋に近づき、扉を開けた。
すると中には、口元にガムテープを貼られ、両手足を縛られて床に転がされた雀さんがいた。

「す、雀さん!」

僕はあわてて、雀さんの両手足のロープをほどき、口元のテープを剥がした。

「ぷはっ、はあ、はあっ……! た、助かった……!」

テープを剥がしたとたん、雀さんが何度もおおきく深呼吸した。
雀さんは、自分の胸に手を当てながら、言った。

「いったい、なにがどうなって……?
昨日の夜、かなでちゃんに電話で呼ばれて、食事をいっしょにとって……でも、そのときからなんだかモーレツに眠くなったんだよな。……いたた、頭が痛い……!」
「……チャコの睡眠薬だ……!」

日高さんが声をあげた。

「でも、眠らせたあと、どうやって雀さんをここまで運んだの……?」
「……チャコのカートだよ」

僕が言った。

「チャコの介護用のカートは、大型犬のためのものだった。そこに雀さんを乗せて、ここまで運んだんだ……!」
「うん、せいかい!」

かなでちゃんは笑っている。
その顔は、むじゃきそのものだった。

「夜になったら、殺して別の場所に運ぼうって思ってたんだけれど」

さらりと、かなでちゃんはおそろしいことを言ってのけた。

「せっかくここまでがんばったんだもん。……やっぱりぜんぶ解いてもらうと、うれしいね!」



それから、かなでちゃんは逃げ出すこともなく、おとなしく警察に連れていかれた。
かなでちゃんの祖母もようやく目を覚まし、そのまま病院へと運ばれることになった。

僕たちはまたしても事情聴取をされるはめになったけれど、 楯岡刑事の口添えもあり、昨日よりも簡単にすまされて、その場で解放された。

たぶん、もう夕方だと思うけれど、空はまだ明るい。
これから夏に向かっていく季節だ。どんどん日が長くなっていく。

「今回は助かっちゃったね。危うく、僕が逮捕されるところだった」

雀さんがえへへ、と笑った。
そんな雀さんに対して、ミカミがふん、と鼻を鳴らした。

「礼なら、彩人に言うんだな」
「えっ、どうして?」

僕はおどろいてミカミを見た。

「真犯人を突き止めたのは、ミカミだろ」
「彩人が『雀さんは犯人じゃない』と言いださなければ、私が別の人間を疑うこともなかった」
「そんな、むちゃくちゃな」

ミカミの言いぶんに、僕はあきれた。

「目の前の証拠より、僕の勘を採用したってことか?」
「もちろんだ」

遠くで、ゆずり葉町の5時を知らせる、チャイムの音が鳴り始めた。
……そういえば縫針先生と、このチャイムの不協和音がなんとも気持ちが悪いと、話したことがあったっけ。

鳴り続けるチャイムの中で、ミカミは笑った。

「……この私の親友の直感が、外れるわけがないだろう」