落としもの(c)


僕たちは場所を変えて、第一体育室へと向かった。

第一体育室のとなりには、あの殺人現場となったD棟があるけれど、 そちらは黄色のテープやらブルーシートやらで囲われていて、立ち入り禁止となっていた。

僕たちは第一体育室に着くと、そっととびらを開けた。
今日は体育の授業もなくなったのだろう。なかにはだれもいない。

昨日とはうって変わって、体育室のなかはしんと静まり返っている。
僕はそのまま、グランドピアノが置かれている壇上へと上がった。

「もしかすると、ここにあるかも……」

きのうのミカミがそうしていたように、僕は床にひざをついてあるものを探した。
そして思ったとおり、探しものはすぐに見つかった。

「……やっぱりあった」

床板の、わずかな溝(みぞ)のすきま。
僕が拾い上げたのは、ミカミが拾ったものと同じ、短い針のようなものだった。

「見せてみろ」

ミカミが僕の拾い上げたものと、自分の拾ったものを見比べ、うなずいた。

「たしかに同じ種類のものだ。……しかし、どうしてこれがここに落ちているとわかった?」
「これ、『センターピン』っていうんだ」

僕は言った。

「ピアノに使われているパーツの一部でね。ピアノの調律……というか、修理をするときに、交換することがあるんだよ。 そのとき、はみ出してあまった部分なんかは、ペンチで切るんだけれど、 切った先がよく床の溝に入ったりして、そのままになってしまうって」

そこまで言った僕は、その先を言おうとして、思わずからだがこわばった。
しかしミカミのまえでごまかすこともできず、僕はしずかに言った。

「……そう、雀さんが、まえに教えてくれたんだ」