待ち合わせ(d)


「……なんのことですか? っていうか、あなた誰……」

一水に続いてやってきた封太は、自分のスマートフォンの画面を柴木に見せた。
スマートフォンはビデオ通話になっていて、画面には少女が映っている。

『この人です! この人が私を監禁していた犯人です!』

画面の向こうの少女が、柴木を指差しながら叫んだ。香月朝陽本人だった。
朝陽の横から龍臣がぬっと顔を出し、

『現場からは以上で〜す。一応こっちも警察呼んでるから、またね〜』

ふりふりと手を振って、通話が切れる。
封太はスマートフォンをポケットにしまうと、いたるの手からストローを抜き取った。

「あと、こちらも現行犯だな。あなたはこのストローに細工をした。おそらく中に睡眠薬が入っている」

封太はストローを掲げた。
どうやら防犯カメラに向かってポーズを決めているようだった。

「こちらもまもなく警察が来る。だから別に答える必要もないが、なぜ朝陽さんを監禁し、その上いたるまで狙ったんだ?」
「出所したあとのことを考えるなら、いま答えておいたほうが楽ですよ。ほんの少しだけですが」

一水に凄まれ、柴木は動揺したように目を泳がせた。

「……き、危害を加えようと思ったわけではない。小学生という黄金期にゲームにのめり込んでいるような子供を……教育し直したかった」
「想像を超えて気持ち悪い犯人だった……」
「睡眠薬を盛った時点ですでに暴行罪ですよ。危害は加えていますって」

封太と一水がそれぞれ、呆れたように言った。

「……どうしてナツくんのふりを?」

いたるがおずおずと尋ねると、柴木は気まずそうに顔を背ける。

「……元になる子どもがいたほうがやりやすかったってだけで、別に誰でもよかった。実際、香月さんの時は他の子どものふりをしていたし。 白河ナツくんは去年クラスを受け持ったからわかるが、友だちを作るのがうまかったから、彼になりきれば警戒心を持たれにくいかと思った」

ほどなくして、喫茶店の前にパトカーが止まった。
ぴかぴかと回る赤色灯を背に、一水はいたるを労るように、肩にぽんと手を置いた。

「まあ、お望み通り、子どもたちの勉強にはなったと思いますよ。……反面教師としてね」

一水が柴木に侮蔑の視線を向けたところで、警察が喫茶店に入ってきた。