その夜。
フレイヤ・オンラインにめいぷるがログインしてくると、すぐに個別チャットが飛んできた。
『あ、あの、フータさん! 私にお手伝いできることがあったら、なんでも言ってくださいね!』
なんだかいつもよりも積極的だな、と封太は思った。
というのも日中、いたるはおとりの話で頭がいっぱいになり、めいぷるが自分のクラスメイト、真夏であるということを封太に伝え忘れていたのだった。
めいぷるが協力的な理由はわからない封太だったが、味方が多いのはいいことだ。
封太は素直に礼を言った。
「ありがとう。それでは私とナツがオフで会えるように仕向けてくれないか。彼を誘き出したいんだ」
『わかりました!』
そのとき、ちょうどナツもログインしてきたので、封太は全体チャットに切り替えた。
「こんばんは、ナツくん」
『あ、フータ、めいぷるさん、こんばんは〜』
ナツが挨拶し、しばらくしてからチャットが流れた。
『今日、なんかお母さんがゲーム機いじっててさ〜。オレのキャラ、勝手に動いたりしていなかった?』
朝陽がログインしていないかどうか、探りを入れているな。
封太はにやりと笑って、チャットを打ち込む。
「私も今さっき、ログインしたばかりだ」
『私もです〜』
めいぷるが調子を合わせる。
偽物ナツよ、バカめ。
このギルドは社会人と学生たちのギルド。
いつだって日中でもログインしているのは、フリーターであるこの私ひとりだけだ!
「宿題もようやく終わったところだし」
『ふたりとも、小学生ですもんね』
封太の白々しいうそに、すかさずめいぷるが乗っかってくる。
『でも明日は土曜日でお休みですから、たくさん遊べますね』
ナイスアシスト。
めいぷるさん、なかなかやるな。自然な流れだ。
「ああ。だが私は友だちが少ないし、明日は退屈しそうだ」
『あ〜、じゃあさあ』
ナツが切り出してきた。
『明日、オレと遊ぶ? 家が近いみたいだし!』
まんまとかかった。
封太は口の端をあげた。
「いいのか?」
『うん! あとは個別チャットで詳しいことを決めよ』
これで偽物ナツを誘き出せる。
ただ、封太はふと、こいつの本当の目的はなんだろうと考えた。
朝陽だけでは飽き足らず、「フータ」とも接触しようとしてきている。
子どもを集めて、一体何をする気なのだろう?