気がかりな放課後 -- 04


保健室をあとにした誠が昇降口に向かっていると、数学教師の狐塚が職員室にもどっていくのを見た。
誠が職員室の中を覗き込むと、そこには狐塚と、もうひとりの女子生徒が立っていた。

「……先生、私、けっこう待っていたんですけれど」

あからさまに不機嫌そうにそう言ったのは、B組の鹿波かなみもこなだった。
スカートのたけは短く、いつも派手なアクセサリーを身に着けており、学年のなかでも目立つ女子生徒だった。

「ああ、わるかった。ちょっと確認しておく用事が残っていてな」

狐塚はぼりぼりと頭をかいてから、自分は椅子に深く腰をかけた。

「そんで、鹿波。おまえは越智が死んだ原因について、なにか知っているのか?」
「……越智さんは自殺したってうわさが流れていますけれど、あれはうそです。越智さんは、自殺なんかしていません」

はき捨てるように、もこなは言った。
狐塚は顎を引き、もこなを睨んで言った。

「根拠は?」

それに対し、仏頂面でもこなが答える。

「……ありません」
「根拠もないのに、自殺じゃあないとどうして言い切れるんだ?」

狐塚は背もたれに寄りかかった。椅子がぎい、ときしむ音がする。

「……おまえももう知っているだろうが、生徒の一部からはおまえが越智をいじめていた、という話が出ている。 もしそれがほんとうなら、おまえが越智の自殺を否定する理由が、なおさらわからない。……鹿波、なにか知っているんじゃあないか?」

狐塚の言葉に、もこなは目をそらして黙り込んだ。
狐塚もしばらくもこなを睨んでいたが、やがてふう、と長く息をはいた。

「わーった、今日はもういい。 ただ、もっと俺のことを信用してもいいと思ったときには、ほんとうのことを話してくれ。俺はいつでも、待っているから」

もこなはそれには答えず、くるりと向きを変えて職員室から出て行こうとしている。
誠があわてて近くの柱の裏側に隠れると、すぐに扉ががらがらと開く音がした。

(……彼女が越智さんをいじめていた、張本人なのか……?)

廊下からもこなの足音が消えると、少し遅れて狐塚も職員室から出てきた。
誠は狐塚に見つからないように、こっそりと遠回りをして学校をあとにした。