気がかりな放課後 -- 02


一方、誠と別れた飛鳥は、ふわふわと1年B組の教室に向かっていた。
自分が通っていた教室を、なんとなく見てみたくなったのだった。

しかし、B組の教室に着いたころにはもう、人はだれも残っていなかった。

「ううむ、さすがに人が死んだ教室には、だれも長居はしたくないか……」

飛鳥は自分の机の前に浮かんだ。
特に変わった様子はないが、机の中はきれいに空っぽになっていた。

「……もう、この教室に私の居場所はないのだな」

この教室だけではない。
この世界のどこにも、もう自分の居場所はないのだ。

「……早く、成仏しなければ」

飛鳥がそうつぶやいたところへ、ひとりの男子生徒がやってきた。
それはとなりのA組の生徒で飛鳥の幼なじみでもある、狩谷かりや佑虎ゆうごだった。

佑虎はいつも困ったような顔をしている。
気弱だけれど、やさしい性格の男子生徒だということを、飛鳥はよく知っていた。

佑虎は、手に花瓶を持っていた。その花瓶には、白い花が飾られている。
どうやら佑虎にも飛鳥の姿は見えていないらしい。目の前に立っていても、なんの反応もなかった。

佑虎はその花瓶を、そっと飛鳥の机の上に置いた。
飛鳥はその花に顔を近づけて、ほほ笑んだ。

「きれいな花だ。水を入れ替えてくれたのか、ありがとう」

声が届かないのはわかっていたが、ついつい声をかけてしまう。
佑虎はじっと花瓶を見つめたあと、なにも言わずに教室から出て行ってしまった。

「……佑虎にも姿が見えないのは、少しさびしいが……きっと、幽霊を見ることのできる赤月君のほうが、特殊なんだな」

飛鳥が肩を落としたとき、

「……きゃっ」

飛鳥の後ろで、ひかえめな悲鳴が聞こえた。