【その場に留まる】
そのとき、玄関のドアベルが鳴った。
わたしはとっさに、近くの柱のうしろに隠れた。
屋敷に入ってきたのは、白衣すがたの男だった。
男はなにかを引きずっている。わたしはそれを見た瞬間、息をのんだ。
『……!』
男が引きずっていたのは、血だらけの人間だった。
男は立ち止まると、その場にかがんで、その人間と目を合わせた。
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まだ息があるとは、さすがですね、三嶽(みたけ)先生。 |
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……う……、 |
三嶽先生と呼ばれた男が、わずかにうめいた。
その拍子に、三嶽先生の手もとからなにかが床に落ちて、カン、と金属の鳴る音がした。
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これは……、貴方の大切な指輪ではないですか。
大切なものを、手放してはいけませんよ。
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そう言うと、彼は三嶽先生の首をつかみ、無理やりその指輪を飲みこませた。
激しく咳きこむ三嶽先生をまえに、わたしは……
……やめてください!
見て見ぬふりをする