爆破によって崩壊したニワトリ小屋を、蒼太たちは二階の教室からぼうぜんとながめていた。
「……たったいまの放送のまえにも、なにかの放送があったんだな。
ほかのみんなはそれで避難していて、校内がしずかだったんだ。……僕たちは、視聴覚室にいたから気づかなかった……」
蒼太がつぶやいた。
「……犯人は、放送室にいるのか。兎沢先生と、青空は?」
「さっき、校門のそとに走っていくのが見えたよ。きっといまは、学校のそとにいると思う」
緋色が窓のそとを見ながら、言った。
「ね、ねえ、それで、あたしたちはいったい、これからどうなるわけ?」
詩良がもこなのうでにしがみつきながら言った。
蒼太は教室のとびらのそと、廊下のほうに注意をはらいながら言った。
「……学校のそとに出るには、校庭か、グラウンドを通らなくてはいけない。でもそんなことをしたら、犯人からは丸見えになる。
……さっきの放送がほんとうなら、僕たちが逃げるところが見つかった時点で、たぶん爆弾を爆発させられる」
「でも、ここから出られないのは犯人もおんなじだよね。……犯人の目的は、なんだろう?」
緋色がひとりごとのように、つぶやいた。
「犯人がなにを考えているかは、わからないけれど……僕が思うに、この教室に全員でとどまり続けることは、危険だ」
蒼太が言った。
「この教室だと、一度見つかったら逃げ道がない。いざというときにすぐ逃げられる場所に移動して、隠れたほうがいい。
……ルールを決めよう。まず、ふたりずつのグループにわかれて行動して、リスクを分散させよう。そうだな……」
蒼太はメンバーを見わたして、思案した。
「僕と緋色、それに志鶴君と鹿波さん、そして亀ヶ淵君と下水流さんでわかれよう。
犯人を見かけることがあったら、携帯電話でほかのグループのだれにでもいいから、ワンコールをすること。
志鶴君と亀ヶ淵君は、あとでミステリ研究部のメンバーの電話番号をひかえてくれ。
それと、メールは使用しないこと。バッテリーを消耗するし、文字として証拠が残ってしまうから。
外部へは僕たちが連絡しておくから、きみたちはバッテリーを温存しておいて」
「……俺のはバッテリーがほとんど残っていないが……、まあ、節約するしかないな」
朔之介がちっと舌打ちをし、蒼太は続ける。
「時間がたてば、そのうち警察がなんとかしてくれるはずだ。
いまの時間は…十七時か。なにごともなければ十八時に一度、どこかで落ち合おう。
場所はそのときの状況によって、こちらから連絡する」
蒼太の提案に反対する人間はいなかった。
この場にいる全員が、一瞬の判断の遅れが取り返しのきかないミスを招くように感じていたのだった。
手ばやく電話番号の交換を終えると、まずはじめに蒼太と緋色が教室を出た。