取材(e)


蒼太たちが視聴覚室のとびらを開いて黒いカーテンをくぐると、教室の前方には大きなスクリーンがおりていた。

ふだんなら、それは授業で使われるためのスクリーンのはずだったが、 たったいま映し出されているのは、どこからどう見ても授業とはまったく関係のない映像だ。

……もっというなら、映し出されているそれは、ホラー映画だった。

光がもれたことに気がついた兎沢が映像を一時停止させると、いままでつけていたヘッドフォンをはずした。

教室内には、ほかにも男子生徒がふたりいる。
彼らも兎沢と同じように、ヘッドフォンをはずしてこちらをふり返った。

「志鶴に、亀ヶ淵。……あんたたち、ここでなにやってんの?」

蒼太のうしろから、詩良があきれたように言った。

「いや、見ればわかるだろ? 映画鑑賞だよ」

朔之介はまったくわるびれずに答えた。
兎沢は、ようやく思い出したように言った。

「……ああ、そっか。今日は部室を紹介してもらうって約束をしていたんだっけ。 ごめんね、すっかり映画に夢中になっちゃって。これ、志鶴君が持ってきてくれた映画なの」
「……えっと、おじゃましてしまったみたいなので、部室見学は今度でも……」

蒼太がそう言うと、兎沢がほほえんだ。

「せっかくだし、ミステリ研究部もいっしょにこの映画の続き、見ようよ。 これはパソコン部とミステリ研究部の、交流活動ってことで。……でも、ほかのみんなにはないしょね」

結局、兎沢の誘いを断ることができずに、ミステリ研究部のメンバーたちもヘッドフォンをつけることになったのだった。