「……わお。……あの同好会に、とうとう五人のメンバーが集まったんだ?」
蒼太のクラスの副担任、兎沢が言った。
蒼太たち五人は、職員室にやってきていた。
放課後の職員室には先生もほとんどいなかったが、運よく兎沢が残っていたのだった。
「五人そろうと、いいことがあるの?」
緋色がふしぎそうにたずねたので、兎沢がにやりと笑った。
「もちろん。お金がもらえるし」
「えっ?」
目を丸くする緋色に、兎沢が続けた。
「メンバーが五人以上になると、同好会ではなくて部活として認められるの。
部活だったら区から補助金が出るからね。……これで、より手広くミステリについて『研究』できるね」
兎沢はミステリ同好会の内情も知っているらしく、そんな皮肉を言った。
それから机のなかから用紙を取り出すと、そこになにかを書きこんでいった。
「……これでよし。顧問には私がなってあげるから、明日にでも部室を紹介してくれるかな。部の名前は、ミステリ研究部にしておくね」
「あ、は、はい。お願いします」
青空が遠慮がちに言った。
兎沢はさらさらと、整った文字で用紙の項目を埋めていくと、最後にぽん、とハンコを押した。
そしてその用紙を確認しながら、兎沢は言った。
「高等部二年の西森蒼太、宮下緋色、中等部二年の鹿波もこな、下水流詩良、西森青空。
以上の五名と顧問の兎沢で、本日よりミステリ研究部を発足します。……はい、はくしゅー」
蒼太たちはそれぞれ顔を見合わせたあと、ためらいながらもぱらぱらと拍手をしたのだった。