月見坂学園の敷地は広大だ。
校舎はA棟からE棟までの5棟に分かれ、体育室や運動場もふたつずつある。
僕たちはB棟をあとにし、縫針先生との待ち合わせ場所だった第一体育室へ向かった。
中にはバスケットボールの練習をしている生徒たちが何人かいて、
ボールを床に打ちつける音と、キュ、と靴底が鳴る音が天井に響いている。
僕は首を回して体育室の中を探してみたけれど、縫針先生の姿はなかった。
「やっぱりここには、いないみたいですね……」
そして体育室を出て、初等部に向かおうとしたそのとき。
「や、山吹くん! ミカミくん……ッ!」
僕たちのところへ息をきらしてやってきたのは、日高さんだった。
僕は彼女の表情を見て、おどろいた。
「日高さん、どうしたの? 顔がまっさおだよ」
日高さんのメガネの奥の目はおおきく見開かれていて、まるでなにかおそろしいものを見たかのような顔つきだ。
日高さんはそのまま僕の制服のシャツの布をつかむと、その場にへたり込んだ。
「あの、そこ、私、校庭のにわとり小屋まで行こうと思って、D棟の前を通って、ほんとに、なんとなくなんだけど、そのとき特別活動室の窓が開いてるのが、気になって……」
日高さんの話は要領を得ていない。
しかし、なにかただごとではないことが起きたことは瞬時にわかった。
僕は日高さんを少しでも落ち着かせるため、いまの情報をまとめながら、ゆっくりと言った。
「特別活動室は鍵もかけられてないし、いまはただの空室だからね。
……それで、その活動室で、なにがあったの?」
僕がたずねると、日高さんは「わっ」と顔を覆って、震えながら言った。
「……縫針先生が、だ、だれかに殺されてる……!」