7月7日(月) 6時58分 -- 02


面会時間の九時ちょうど、病室に入ってきたのはハルカと、僕の妹の西森青空あおぞらだった。
ハルカは気さくに、左手をひらりと軽く上げた。

「よっ! 見舞いに来たぞー」
「来たぞー」

青空がハルカの真似をして、同じように笑顔で左手を上げる。
青空は高校生だ。今日は月曜だというのに、私服を着ている。
見舞いを口実に、学校を休むつもりなのかもしれない。

「だいじょうぶ、お兄ちゃん? 階段から落ちて、大けがしたらしいけれど」

僕の顔をのぞきこむ青空のうしろで、ハルカが僕の目をじっ、と見つめた。
どうやら話を合わせろということらしい。

……たしかに、女の子に頭をゴルフクラブでなぐられた、なんて言ったら、 心配するどころのさわぎではなくなるだろう。

「あ、ああ、あんな高いところから落ちるなんて、僕もおどろいたよ」

僕がそう言うと、青空は腰に両手を当てた。

「もー、しっかりしてよ、お兄ちゃん! ……でも思ったより、元気そうでよかった。もう今日には退院できるんだよね?」
「ああ、まあね」

そこでハルカが、ふと席を立った。

「オレ、なにか飲みものを買ってくるよ」

僕はそんなハルカに、あのとき忠告を聞かなかったことを謝りたいと思った。
しかし、青空が僕は階段から落ちたのだと思っている以上、彼女のまえではなにも言えない。

「……お兄ちゃん」

ハルカが病室を出て行ってから、青空は僕のベッドのすみに腰をかけた。

「……緋色ちゃん、行方不明って、ハルカさんから聞いたよ」
「……うん」
「もしかして、お兄ちゃんのけがとなにか関係があるの?」

僕はおし黙った。
話せば長くなるし、そもそもどこからどう説明していいのか、わからなかった。

青空はぎゅっ、と僕を抱きしめた。

「無理してなにか言わなくてもいいよ。でも、私にできることがあったら、いつでも言ってね」
「……それ、ハルカにも言われたな」
「そう? 私、ハルカさんに似てきたのかも」

青空が僕に抱きついたまま、ふふ、と笑ったところにハルカが息を切らせてもどってきた。

「蒼太! ……緋色が見つかったって! 意識はないけど、生きてるって……、……ん? あれ?」

僕たちの様子を見て、ハルカが固まった。

「オレ、もしかしておじゃました?」