僕たちは店で手に入れた品物をショッピングカートに載せ、押しながら街中を歩いた。
タイヤが地面をこすり、がたがたと音を立てる。
へたなスーツケースに入れるよりも、これがいちばん運びやすかったのだ。
路上のあちらこちらに止まっている車を見ながら、僕はため息をついた。
「こんなことになるなら、車の免許、取っておけばよかったな」
「車に乗ってしまったら、ちいさな手がかりを見落としてしまうかもしれません。
私たちには、こうして歩いていくほうが合っていますよ」
みずきが僕をなぐさめるように、言った。
しかし、みずきと話をしているあいだも、僕の頭からは先ほどの電話のことが離れなかった。
池袋から2駅ぶんほど歩いたところで、みずきが足を止めた。
「蒼太さん、あそこが私の家です」
みずきが指差したのは巨大な屋敷だった。
まさか、と思ったが、みずきの指差した方角には、延々と続く塀しか見えない。
「どうでしょう、今日は私の家に泊まっていきませんか?」
「……いいのかな、僕なんかがおじゃましても……」
「私がいいと言ってるんだから、いいんですっ」
みずきがうれしそうに笑う。
おおきな門をくぐり抜けると、これまたおおきな庭が広がっていた。
青々とした芝生の中央に立派な石畳が続いている。
「お城みたいだな……」
僕は呆気に取られた。
屋敷の中は薄暗かった。
みずきが灯りをつけても、すべてのカーテンが閉まっているせいか、部屋の隅々までは光が届いていない。
「……すごい豪邸だな。もう一度聞くけど、ほんとうに僕みたいな庶民が入っていいのか?」
「庶民だなんて、うふふ。あ、靴は履いたままで大丈夫ですよ」
みずきに手を引かれるままに、僕は廊下を歩いていった。
廊下にも見るからに高価そうな絵画や彫刻がいくつも飾られている。
そうして階段を上がり、それから少し歩いて、ようやくみずきが止まった。
「ここが私の部屋です」
ぎい、と音を立てて、重そうな扉が開く。
扉の向こうは、僕のマンションのひと部屋の5倍……いや、10倍はあるかもしれない、とても広い部屋だった。
カーテンは白のレース。ベッドの上にはおおきなテディベアが置かれている。
おおきな化粧台に、本棚、洋ダンス……そのどれにも同じ模様が施されていて、統一されていた。
みずきは言った。
「あの、ここでお待ちいただけますか? 私、お風呂に入ってきますから」
これは、ひとりきりになるいいチャンスだ。
緋色に電話できる機会をうかがってはいたものの、いまだにメールさえ送れていないことが気がかりだった。
「うん、わかった。ゆっくりどうぞ」
僕が言うと、みずきは部屋から出ていった。
みずきの足音が聞こえなくなったあと、僕はポケットから携帯電話を取り出すと、緋色に電話をかけた。