7月4日(金) 8時00分(a)


聞き慣れた単調なアラーム音で、僕は目が覚めた。
無意識に枕もとの携帯電話を手に取ると、一件のメールが届いていた。

『あおちゃん、おはよう! もしまだマンションにいるなら、玄関を出たところで待ってて!』

それは、宮下緋色からのメールだった。
あわてて日付を確認する。今日の日付は、七月四日の金曜日だった。

(七月七日の、三日まえ? だって僕はいままで、だれもいない七月七日に……)

僕は部屋のカーテンを開けた。
窓からしたの通りを見下ろすと、そこには当たり前のように行き交う人々のすがたがあった。

みんみんみん、とセミがにぎやかに鳴いている。

空は快晴。
真っ青な空と、真っ白な雲。

その、『以前』と変わらない風景に、手放しで喜ぶことができない。
……三日まえ。たしかに僕は、緋色から同じメールを受け取った記憶があるからだ。

僕はテレビの電源を入れてみた。
予想どおり、放送されていたニュースは以前、僕が一度見たことのあるものだった。

僕はテレビを消すと、いそいで身じたくをした。

かばんを引っさげてばたばたと玄関まで駆けていき、部屋を出る前に一度だけ後ろをふり返る。

テーブルの上にメロンパンの入っていたビニール袋も、ふたり分の空き缶もない。
そこに僕以外の少女がいた痕跡は、どこにもない。

僕は黙ったまま、扉を閉めた。