ぼくたちは物音を立てないよう、細心の注意を払いながら、ひと部屋ずつ捜索していった。
しかし、それらしいものはなかなか見つけることができず、ただ時間だけがいたずらに過ぎていった。
「そう簡単に見つかるものでもないか……」
くるみさんが、わずかにくやしそうに息をはいた。
いま、ぼくたちがいるのは米坂当主の部屋だった。
しかしこの部屋はきれいに片づいているぶん、探すことのできる場所も少なかった。
白河くんがじゅうたんをめくりながら言った。
「まあ、この家で生活しているくるみが、いままで気づかなかったぐらいだから、よほど巧妙に隠されているんだろうよ」
「もしくは、あの予告状が……」
ぼくはつぶやいた。
「ただのいたずらだった、……ってことも……」
「そんなはずはないわ」
くるみさんが、ぼくの言葉にかぶせるように言った。
そしてすぐに、声のトーンを落とした。
「……しまった、使用人が来るわ。はやく隠れて!」
くるみさんのひと声で、ぼくたちはあわててクローゼットのなかに隠れた。
使用人さんはこの部屋のカーテンを閉めにやってきたらしい。
クローゼットのとびらの向こうが、うす暗くなる気配がした。
じゅうたんのせいで、足音はほとんど聞こえない。
そのかわりに、ぼくの心臓は早鐘のように、ばくばくと鳴った。
とてつもなく不安だ。……見つかったらどうしよう?
緊張で、顔が熱くなってくる。
三人で息を殺したまま固まっていると、パタンととびらが閉まる音がした。
しばらくのあいだ、三人とも身動きひとつしなかったけれど、やがてくるみさんが口を開いた。
「……もう行ったみたい。出ていいわ」
「……って、おまえはべつに、隠れる必要がなかっただろ」
白河くんがくるみさんにそう言い、くるみさんは特にわるびれるようすもなく、
「その場のノリってものがあるでしょう」
と、すずしげな顔で言ってのけた。
あきれている白河くんをよそに、
くるみさんは胸もとから取り出した懐中時計で時間を確認すると、顔を上げた。
「……残るは広間、ね」