推察する昼 -- 03


昼食が終わったあとの、昼休み。

鹿波もこなとその友人・下水流しもつる詩良しいらは、学校の外にある雑木林で時間をつぶしていた。
月見坂学園の校庭のフェンスには破れ目があり、そこからここへと抜けられるようになっているのだった。

「それにしても、まさかあんなんで死んじゃうとはねー……」

詩良がクスクスと笑うと、持ってきた菓子のセロハンをびりびりと破り捨てた。

詩良はもこな以上に、派手な印象の女子生徒だった。
毛束の多い髪を高い位置でふたつに結んでおり、校則違反のカラフルなリボンを飾っている。
格好は派手でも比較的まじめに授業を受けているもこなと違い、詩良は気ままに授業をエスケープする、自由な性格の持ち主だった。

「ねえもこな、昨日狐塚になにか言われた?」
「なにもなかったわ」

もこなは詩良を見ずに答えた。
詩良は菓子を口の中に放り込みながら、言った。

「そ。……まあ、学校はおりのようなものだけれど、その檻に守られているのも事実だからな」

そして鼻で笑う。

「……よくも悪くもね」
「か、鹿波さん……っ」

ふいに、ふたり以外の声が聞こえてきた。

ふたりが同時に振り返ると、そこにはA組の狩谷佑虎が立っていた。
佑虎は息をきらしながら、ふたりに向かってちいさな声で言った。

「ここに来るのが見えたから、走ってきたんだ……」

詩良はひとりで「キャー!」とうれしそうに飛びはねると、もこなの背中をばんばんと叩いた。

「あたしは先に帰ってるから! ……あとで色々聞かせてよ?」

詩良はもこなに小声で耳打ちすると、せわしなくその場から去って行った。
うんざりとした顔で詩良を見送ったあと、もこなは佑虎をちらりと見た。

「……なにか用?」
「あ、ううん、特にこれと言ったことはないんだけれど……」

うつむく佑虎を見て、もこなは不愉快そうに顔をそむけた。

「……どうせ越智さんのことでしょ? 小言は狐塚だけでじゅうぶん」

もこなは舌打ちをした。

「……で、でも……あの、僕、鹿波さんに言いたいことがあって……」

しかし、なにかを言いかけた佑虎に向かって、もこなは、

「……うるさいわよ!」

と声をあらげた。
とまどう佑虎を前にして、もこなはぴしゃりと言い放つ。

「佑虎、小学生のときからあんたのことをずっと見ていたけれど。 あんた、越智さんのあとばっかりくっついていって、ほんとうにばかみたい。 もう、あいつは死んだのよ? だからあんたはもうあんなやつのこと、1日も早く忘れるべきなのよ!」

そのとき、ぼたぼたぼた、ともこなの上になにかが落ちてきた。
しばらくきょとんとしていたもこなは、やがて悲鳴をあげた。

「きゃ、きゃあああ!? なにこれ、毛虫ッ!?」
「え、え!? だ、大丈夫!?」
「いやあああッ! は、早くとって! きゃあッ!? 背中に入った!!」

ギャーギャー騒ぐもこなの頭上の木の枝のかげで、

「ざまあ見ろ、ばあか」

ぴよ吉がへっ、と笑ったのだった。