いかにもまじめそうな外見の若い警察官は、
自分の乗ってきた自転車を横に止めると、深神に近づいてきた。
「君、ここでなにをしているんだい?」
深神は素直に答える。
「少年と話をしていました」
「ふうむ。ちなみにご職業は?」
「探偵です」
「探偵がこの少年に、どういう用事だったのかな?」
それまで警察官と深神とのやり取りの様子を黙って見守っていた響平は、
『この少年』と呼ばれたことにぎょっとして、あわててフェンスから離れていった。
深神はそんな響平の姿を見送ったあと、さらりと言った。
「単に興味があって」
警察官はなにかを確信したように、うなずいた。
「ちょっと署まで来てもらおうか」
「え、なぜですか?」
心底ふしぎそうに首を傾げる深神をよそに、
警察官が自分の肩にある無線機へ手をのばした。
しかしそのとき、黄色のセダンがキキ、と急ブレーキをかけて、すぐそばに止まった。
「あっ……島田刑事!」
車からおりてきた妙齢の女性を見た瞬間、若い警察官の頬がわずかに紅潮した。
警察官は、彼女に対して素早く敬礼をした。
「お疲れさまです! あっ……、でも、今日はお休みなんですよね!」
「うん。柚野君はお仕事ご苦労様」
ふー、と女性は前髪をかきあげる。
「はい! たったいまも、あやしい人物を見つけたところです!」
このとおり、と言わんばかりに柚野に両手で指し示されてしまった深神は、
何となく両の手のひらをあげて「降参」のポーズをしてみせた。
「あー……」
島田志摩子は面倒くさそうな顔をしたあと、やがてため息を吐いた。
「そいつ、見た目も行動もあやしいけれど、あたしたちの仕事を邪魔する人ではないから、
ちょっと見逃してやってくれないかな?」
「えっ……お、お知り合いなんですかっ? この人と?」
柚野と呼ばれた警察官は、おどろいた面持ちで志摩子と深神をきょろきょろと見比べた。
そんななか、志摩子は苦い顔をしてぼそりと言った。
「……そいつは、あたしの悪友なのよ」