そして、 -- 02


船が港についたあと、都子の客室から、彼女の遺体が発見された。
都子はその胸元にナイフをつき刺し、自殺したようだった。

都子の客室からは本人が書いたと思われる遺書が残されており、今回の事件についても細かく記されていた。
こうして、船の上の事件の幕は降りたのだった。

船から降りると、深神とハルカは簡単な事情聴取を受けた。
そのあと、深神は警察に用事があると言ってその場を離れたので、ハルカはひとりで深神がもどるのを待つことになった。

いつの間にか、空はくもり空から晴天に変わっていた。
まぶしい夕日が、海とおおきな船を照らしている。

乗客たちの事情聴取も、ほとんど終わったころ。
ぼんやりと海を眺めていたハルカのところへ、赤月兄妹と青空がやってきた。

「今回は、たいへんなことに巻き込んでしまって、申し訳ありませんでした」

誠が頭を下げた。

「また改めて、あいさつにうかがわせてください」
「いや、いいって、そんなにかしこまらなくても。そういうのは抜きにして、またみんなで気楽に会おうぜ。な?」

ハルカが笑うと、誠のとなりで、おずおずと青空が言った。

「あの……ハルカさん。髪留め、ありがとうございました」
「ああ」

ハルカが笑い、青空の頭をぽんぽんと叩いた。

「青空も、元気でな」

そのとき、舞がくるりと向きを変えて、すたすたと少し離れた場所まで歩いていった。
それから立ち止まって振り返ると、ハルカのことを手招きした。

その様子を見て、誠が言った。

「……舞が、なにか言いたいことがあるようです。どうか行ってやってもらえませんか? ……僕たちは、ここで待っています」

ハルカが舞に近づくと、舞はちょうど内緒話をするときのように、手のひらを自分の口元に寄せた。

「なんだ、どうした、舞?」

ハルカは腰をかがめて舞の口元に耳を近づけた。
すると舞は、いままでとはまるで別人のような……とても子どもとは思えない、やさしく甘い声色でささやいた。

「ひとつだけ、聞いておきたいことがあるの。 黒野の悲鳴がデッキから聞こえたとき、舞とあなたたちは7階の客室の扉の前ではち合わせたわよね。 ……あのとき、あなたたちが『自分の客室』からではなくて、『村崎幸治郎の客室』から出てきたのは、どうして?」

それを聞いて、ハルカの目がおおきく見開かれた。