いくつめの事件(j)


バーのカギは開いていた。
部屋の明かりは、ついていない。しかし窓から入りこむ光のおかげで、そこまで暗くもなかった。

入り口を入ってすぐのところにカウンターがあり、カウンターのなかには色とりどりの酒のボトルが並んでいる。
酒を保存しているからなのか、部屋のなかはすこし肌寒かった。

部屋の奥はバルコニーとなっていて、バーからは直接外に出られるようになっている。

深神はバルコニーへ出ると、その真下を見下ろした。
たしかにここから人が落ちれば、ちょうど深神たちが目撃した場所と一致する。

「……なにかわかった?」
「ああ」

深神は帽子のつばをつまんで、目元をかくした。

「いいかげん、そろそろお遊びはやめにしましょうか。……犯人になりたがっている者の望みを、叶えてあげなくてはね」