「……好きなように推理を始めろと言われても」
深神は大げさなため息をついた。
「この事件の『犯人』を本気で探すというのなら、さすがの私にももう少し、時間がほしい」
それから深神は、桜子にたずねた。
「ひとつ聞きたいことが。このパーティの招待状を手配した者は?」
「私の部下たちがひととおりチェックして、このパーティにふさわしいお客さまへ送ったはずだわ」
「しかし、実際には『お客さま』にはふさわしくないわれわれにまで、招待状が届いている。ご丁寧にも犯行予告のカードまでそえられてね」
「……この犯行予告のことね」
桜子が、深神からすり取ったままだったカードを、ポケットから取り出した。
深神はそのカードを指差して言った。
「つまり、その送り主こそが犯人か、少なくとも事件の関係者だろう。
いそいでわれわれの招待状を手配した人間について、調べてください」
桜子はだまってカードの文面を見つめていたが、やがてため息をついた。
「……なあんだ、推理もしないで、ただの情報収集だけで解決してしまうの?」
「解決するかもしれないのだから、もっと喜ぶべきですよ、赤月代表」
しかし桜子は、不満げな態度をかくさずに言った。
「……しかたがないわね。高松、あしたまでに、彼らの招待状を手配した人間を調べて」
「かしこまりました」
高松がこくりとうなずいた。