プロローグ


……部屋のなかは、これで静かになったはずだった。
それなのに、騒々しく耳障りな不協和音は、いつまで経っても耳もとから離れない。

その音は後悔と、自分を責め立てるこころの声の重なりでできていた。

ちがう。
こんなはずじゃなかった。

こんな結末、望んでなんていなかった。

死ぬことは、こわくなかった。
うらまれることも覚悟していた。

それなのに、どうしてこんな。

……わかっている。
これは罰だ。

あやまちを憎しみでは正せない。

それに気づけなかった、
……いや、気づかないふりをしていた自分への罰。

それでも。
そうだったとしてもこれは、あんまりじゃあないか。

無意識に服のそでで鼻をこすれば、ほんのりと海のにおいがする。
そうだ、ここはすべての生命(いのち)が還る海の上。

だからきっと、
……頬がぬれているのも、潮風に吹かれたせいなんだろう。