燈される夜 -- 02


「……だれかに見つかったら、やっぱり怒られちゃうかな?」

青空が、誠に小声で話しかけた。
ふたりはこっそりと、夜の学校に忍び込んでいた。

校庭にいると少し肌寒いが、誠と青空にはそんなことを気にしている余裕もなかった。
警備員に見つからないように低く腰をかがめながら、誠が言った。

「青空、よく家を抜け出せたね」
「マリアちゃんのあの言葉が気になったから……。
大丈夫、万が一ばれても、お兄ちゃんがうまくごまかしてくれると思う」

時刻は、すでに23時を回っていた。
マリアはともかく、飛鳥は確実に、この学校のどこかにいるはずだ。

「……夜の飛鳥ちゃんって、なにをしてるんだろう。部室棟にいるのかな?」
「とりあえず行ってみようか」

ふたりはこそこそと校庭を横切り、部室棟へ向かった。



「……いま、警備員じゃあないニンゲンの足音がした。部室棟に向かっているみたいだ」

ぴよ吉が耳をそばだてながら、飛鳥に言った。

「部室棟? ……私、様子を見てくる。ぴよ吉はここで待っていて」

飛鳥はぴよ吉の元を離れるとすぐに、誠と青空の姿を発見することができた。
飛鳥は手を振りながら呼びかけた。

「赤月君! 西森さん! どうしてこんな時間に学校へ?」
「飛鳥ちゃん!」

青空がほっとした表情になり、

「マリアっていう子は?」

となりで誠がたずねた。

「マリア? 今夜はまだ見かけていないが……なぜだ?」
「夕方、本人に声をかけられたんだ。夜、学校に来ないかって」
「なに? それはどういう意味だ……?」

誠と青空がおたがいの顔を見た。
やはり、からかわれただけだったのだろうか。

そんなふたりに、飛鳥が言った。

「しかし、ちょうどいいところに来てくれた。実は私の友人がけがをしてしまったんだ。
私ではじゅうぶんな手当てをしてやれない。どうか手を貸してくれないか?」

そうして誠と青空は、飛鳥に校庭の隅まで連れていかれた。
ぴよ吉は、そんなふたりを警戒しながら迎えた。

「ぴよ吉! こちらは私の友人の赤月誠君と西森青空さんだ」
「はじめまして」

ぴよ吉の姿におどろきながらも、誠と青空は律儀にあいさつをした。

「ふたりとも、こちらはぴよ吉だ」

青空はしゃがむと、ぴよ吉の翼にそっと触れた。

「……ひどいけが。一度、お医者さんに見てもらったほうが……」
「獣医にでも見せるのかよ?」

青空の言葉に、ぴよ吉が鼻で笑った。
そんなぴよ吉の態度にはめげずに、青空が言った。

「と、とりあえず、水で傷口を洗い流して……あっ、保健室になら、なにか消毒できるものがあるかも……」
「……待て」

そのとき、ぴよ吉が翼で青空の動きを止めた。
校庭に揺れる懐中電灯の明かりが見えたからだった。

「……だれだ? まずい……こっちに来るぞ」
「で、でも、隠れる場所はどこにも……」

そうこうしているうちに、その光はとうとう飛鳥たちのすぐ前までやってきた。
まばゆい光は、誠たちの姿を照らした。

「……やっぱり、おまえらか……」

懐中電灯を手にしていたのは、数学教師の狐塚だった。