調理室


……おや、増田君。引きこもりの君がこんな所にいるとは珍しい。

……よく言うよ、コヒナタ。……だれのせいでここ数日、なにも口にしていないと……

私は君に、何かを強要した覚えはないが。そもそも君が、頑なに私の料理を拒んでいるだけだろう?

……。

……コヒナタって、童話に出てくるわるい魔女みたいだ。

人間をおびき寄せ、殺して食べる。お菓子の家に住むわるい魔女。

……私は人間を食べたことなど一度もないよ。

生かしたことも、ないくせに……

……それにしても、この邸も随分と賑やかになったとは思わないかい。

……? らしくないな。そんなこと、気にしたこともなかっただろ。

……私にはわからなくてね。

変わっていくことが果たして望ましいことなのか、……それとも嘆かわしいことなのか。

調理室から離れる