あなたは目を覚ました。
街中の喧騒は遠く、ビルの影であなたは仰向けに倒れている。
|
|
よかった! 目が覚めたんですね。あなたは路地裏で倒れていたんですよ。 |
|
|
救急車は呼んでありますから、そのうち来ます。自分のお名前は言えますか? |
あなたはすべてを思い出した。
彼は「戸隠先生」で、あなたがかつて、小児病棟で世話になっていた医者のひとりだ。
そして先ほど見ていた──おそらく「夢」のなかの話にちらりと出てきた「コヒナタ先生」というのも、同じ病棟で何度か見聞きした医者の名前だった。
|
|
顔色ももどってきていますし、ひとまずは大丈夫そうですね。ただ、頭を打っているかもしれないので、病院での検査は必要ですが…… |
あなたは上半身を起こすと、照れ臭さを紛らわすためにいままでの夢の話を戸隠先生に打ち明けた。
しかし戸隠先生の表情は、より一層険しくなった。
|
|
──俺が勤めている病院で、子どもたちがたびたび姿を消す事件が起きていて。その事件に関して調べていくうちに、「コヒナタ先生」に行き着いたんですよ。 |
|
|
そして彼のあとを追ってこの路地裏に入ってきて……倒れているあなたを見つけたんです。 |
|
|
……俺は恐ろしいです。現実離れしたなにかが、すぐ近くに迫っている気がして……。あなたを見送ったら、俺はもう一度コヒナタ先生の足取りを追ってみますね。 |
遠くから、救急車のサイレンの音が近づいてくる。
あなたはなんとなく、路地裏の狭い空を見上げたのだった。
戸隠先生の行く末を祈って。(The End)