【あの男の人を、助けて……!】


しかし、彼は心底ふしぎそうな顔をした。


……あの男って……コヒナタのことかい。


『ちがいます! そこの……血だらけの男の人です……!』

わたしがそう言ったとたん、マスターの顔は険しいものに変化した。


……そんな人間はいないよ。
……スズ。まさか、きみ、視覚認知機能が……
残念だったね、増田君。
少なくとも、きみには見えないものが、彼女には見えているようだ……
うるさい、わざわざ皮肉を言われなくたってわかってるよ!
くそ、やっぱりきみからの素材の提供なんて、受けなければよかった……!
たしかに、今回のきみの「失敗」の原因は、私にもある……、
せめてもの責任だ、私が彼女の電源を落とそう。
……や、やめろ、彼女に……五十鈴(いすず)君に手を出すな……


そう呻(うめ)いた三嶽先生の手を、「コヒナタ」が踏みつけた。
そしてそのまま、わたしに近づいてくる。


……残念だったね。もう一度、出直しておいで。


意識が遠のいていく……




- End2. 彼には見えない -