【客室】


一冊の本を手にとったとたん、一瞬だけ、部屋のなかがまっ白な光に包まれた。


げほっ、げほっ!
……な、なんだ!?
「なんだ!?」はこっちの台詞だよ……ッ! ここはどこ!? うわッ、俺の2Pカラー!? きもちわるッ!
ぼ、ぼくからしたらきみのほうが2Pカラーなんだけれど……
いやいやいや、っていうか2Pカラーのくせに俺より背が高い! ありえないでショ!?
だって、きみはまだこどもじゃないか……
きーっ、うっさいなあ! 俺はこう見えても森・の・神・さ・ま!! キミたちの何百倍も長生きしてんの! わかる!?
……森の神さま……、もしかして、この『緑の背表紙の本』のなかに出てくる……?
本? ……あー、なるほど、そういうことか。こっちではもうそんな時期なんだね。
……? なにを言って……


……玄関の扉が開く音がかすかに聞こえた。


まずい! 『あいつ』が帰ってきた……!
は? あいつって?
説明しているヒマはないんだ! あいつに見つかったら、そこにいる人があぶない。どこか隠れる場所は……、
目のまえにあるじゃん。
へ?
だから、本のなかだよ。俺は森の神さまだから、向こうの森に帰りさえすれば全能だ。そしたらこいつを、『もとの世界』に帰すことができる。
きみ、自分の意思で本に帰ることができるの?
できるよ、まえにもしたことがあるしね。2Pカラーはどうする? キミも向こうに行けば、俺がキミの願いも叶えてあげられるけれど。
2Pカラーって言うな。 ……ぼくの願い……、か。
……、いや、いいよ。ぼくがすべきことは、この場所でしかできないから。
……そ。じゃあそこのアンタ、さっさと行こうか。……悪夢の覚悟をしときなよッ!


……身体が光に包まれる……