| 増田君、ただいま帰ったよ。 | |
| う、うん、おかえり、コヒナタ……、って、服についてるの、血…… | |
| そうなんだ、珍しいだろう? | |
| ……ところでまったく関係のない話なんだが、 『向こう側』のとある病院で最近、子どもが忽然(こつぜん)と姿を消す事件が起きていてね。その事件の解決にひとりの医者が名乗りを上げた。 | |
| しかし、残念ながら彼も後(のち)に、すがたを消してしまったらしい。うわさでは、神隠しの犯人は『性悪なヤマネコ』で、その医者もヤマネコに美味しく調理されてしまったとか。 | |
| ……えっと。 | |
| ……。 | |
| ……、さっきの話、聞いちゃった? | |
| ああ。 | |
| ………………。 |
| ……その人は、ぼくの客人なんだ。見逃してくれないかな。 | |
| 見逃すことで、私にメリットは? | |
| ……見逃すことのデメリットも、ないだろ? ニンゲンなんていくらでも手に入るんだから。 | |
| そうやって目に入るものだけを助けようとする精神は、偽善だと思うがね。 | |
| いまさら善悪を説ける立場でもないだろ、おたがい。 | |
| ……しかたがないな、増田君は。 | |
| 増田君に免じて、いまは貴方を見逃してあげよう。…… | |
| ……どうせ、貴方とはまた、会うことになるだろうからね。 |