その日の午後。
たちはフィリーネの葬儀のため、聖堂をおとずれていた。
聖堂に集まった人間はそう多くはなかったが、だれもが黒色の装いをしている。
この街では、葬儀のときにはみんな、黒い服を着るのだという。
たちも、郵便屋が借りてきてくれた黒い服を着ていた。
フィリーネの棺は、祭壇のまえに置かれていた。
周囲の人間たちにならって、とも棺のまえで黙祷をする。
そのあと、参列者ひとりひとりの献花が行われると、棺は聖堂の外へと運ばれていった。
たちの目のまえで、棺は墓地に掘られた穴に置かれ、土がかけられていく。
は胸に手を当てた。
(さようなら、フィリーネさん……)
やさしく笑う人だった。
もっと、その笑顔を見ていたかったけれど……
は郵便屋がどうしているのか、気になった。
そしてふり返ろうとしたところで、視界のはしに見覚えのあるすがたを見つけた。
わずかに口をへの字に曲げて、こちらの様子をうかがっている少年。
「……か、神さまっ!」
は、思わず大きな声をあげてしまった。
その声に、その場にいた全員が神さまをふり返り、神さまはびくっとからだを震わせて、その場からいきおいよく逃げ出した。
「ま、待って、神さま!」
反射的にとはその後を追いかけた。
しかし神さまは、どんどん先へと行ってしまう。
「ど、どうして神さまが街に……!?」
が言って、が答える。
「……わからない! でも、もしかすると、フィリーネさんの葬儀を見に来たのかも……!」
自分が一度生き返らせた人間が、もう一度死んだ。
……フィリーネさんが葬られる瞬間を、神さまはどんな思いで見ていたのだろう、とは思った。