玲花は出版社をあとにすると、近くの公園に立ち寄った。
公園の入り口の自動販売機で缶コーヒーを購入し、適当なベンチに座る。
玲花が腰をおろしたベンチはちょうど木陰になっていて、ほどよくすずしい。
カコ、とふたを開けて缶に口をつけると、玲花は大きく息をはいた。
濃い青の空のした、小鳥の鳴き声などが聞こえてきたりする。
風に乗って聞こえてくるのは、学校の子どもたちの声やホイッスルの音、そして車の行きかう騒音だ。
のどかな正午まえの天候とは裏腹に、玲花は眉間にしわを寄せながら、数メートル先の地面をにらみつけていた。
……この世のなかには、うさんくさい常識があふれすぎている。
だれもが自分に都合のいい情報だけを必要とし、それを取り扱っては常識の皮をかぶって、大多数に属そうとする。
少数のものは、たとえ真実だったとしても簡単に屠(ほふ)られてしまうのだ。
真実を追求することがそんなにわるいことだろうか?
平和は妥協の上にしか成り立たないのか?
保身を内包する正義が許されるのか?
舌の上に残る人工的な酸味。
「……あまい。あま過ぎる」
玲花は残りのコーヒーを一気に飲み干すと、近くにあったゴミ箱のなかへ、ぽんと放り投げた。
カン、と良い音がするのと同時に、玲花もベンチから立ち上がる。
後悔するのはいやだ。
それをだれかのせいにするのは、もっといやだ。
私は、私の直感を信じる。
「……決めた」
私は、ひとりでも真実を暴いてみせる。