「雀さんが、行方不明?」
僕は息をのんだ。
「どういうことですか?」
「それは、さっぱりわからない。捕まるまえに逃走したのか、あるいは事件に巻きこまれたのか。
どちらにしても、きのうの事件とまったくの無関係ということはないだろう」
つまり、あの事件はまだ、終わっていないということだ。
ミカミはなにかを考えたあと、顔をあげた。
「楯岡刑事。今日、現場に鑑識は来ているか?」
「あ? ああ、来てはいるが……」
するとミカミは、あのセンターピンが入った密封袋をとり出した。
「これに指紋がついているかだけ、調べてほしい」
僕はどきりとした。
やはりミカミは、まだ雀さんをうたがっているのだろうか。
楯岡刑事は深くため息をついたけれど、ミカミの要求には従ってくれるらしかった。
センターピンを持って楯岡刑事が体育室から出て行くと、
ミカミも「すこし確認したいことがある」、と言い残し、どこかへ行ってしまった。
ふたりに待たされて、数十分。
まずははじめに、ミカミがもどってきた。
そのすぐあとに楯岡刑事ももどってくると、密封袋をミカミに返しながら言った。
「粉末法をためしてみたが、だれの指紋もついていなかったぞ」
「なるほどな」
ミカミはひとりで納得している。
「よし、彩人。行くぞ」
「ど、どこに?」
するとミカミは、すっ、と目を細めて笑った。
「作戦会議だ。犯人を捕まえるためのな」