燈される夜(c)


狐塚は誠たちのすがたを確認して、額に手を当てた。

「……おまえら、ばれないとでも思ったか? おとなをなめるなよ」

それからぴよ吉に視線を移すと、特におどろいたようすもなく、ただ舌打ちをした。

「この鳥を保健室に連れて行け。俺も警備員と話をつけたら行くから」
「……わかりました」

誠がうなずくのを見てから、今度は誠のとなりに浮かんでいた飛鳥に、狐塚が『話しかけた』。

「越智。おまえも、逃げるんじゃあねえぞ?」
「はいっ! ……へっ!?」

いきおいで返事をしてしまったものの、 狐塚に自分のすがたが見えていることに気づき、飛鳥はごくりとつばを飲みこんだ。



誠達が保健室の前で待っていると、そのあとまもなく、狐塚もやってきた。
狐塚がカギを開け、部屋の電気のスイッチを入れてなかに入っていく。

消毒液を手に取った狐塚に、飛鳥はこわごわとたずねた。

「せ、先生……、私のこと、ずっと見えていたんですか?」
「最初からバッチリな。バカかおまえは、おとなしく成仏してろよめんどうくせえ……」

狐塚はぴよ吉の傷口を水で洗い流したあと、消毒液をたらした。
そのあとガーゼやら包帯やらを巻こうとしていたようだったが、しばらく健闘したあとに、とうとう切れた。

「あぁーッ!! くそっ、なんで俺の腕に巻きつくんだよッ!?」

ぐしゃぐしゃと丸めてポイ、とうしろへ放り投げられた包帯を、青空があわてて受け止めた。

「つ、続きは私がやりますから……!」
「……っていうかおまえら、もういいから家に帰れ!」

どなる狐塚に、

「狐塚先生はマリアって幽霊のこと、知っていますか?」

誠がたずねた。
狐塚がぎょっとして、誠を見た。

「ああ!? そんなやつ、俺は知らねえ……」

そこで誠がゆっくりと狐塚を指さした。厳密には、……狐塚の背後を。
狐塚がいやな顔をしながらも、そろりとふり返る。

「……どうしてうそをついているのかな? みのりちゃん」

そこにはマリア本人が浮かんでいた。笑顔で。